サウナイキタイケドイケナイ

5月 07, 2021

サウナイキタイケドイケナイ

きっかけはYoutube

2019年の夏、私はサウナにハマった。きっかけはオリエンタルラジオ・藤森さんの動画だ。

当時Youtubeにおすすめされた動画をなんとなく見ているうちに徐々に引き込まれ、中盤に差し掛かる頃にはその熱く語る内容に感化されて「ちょっとサウナ行って見ようかな」という気になっていた。
そして動画の最後で紹介されたサウナのオーナーさんが、過去に少しだけお話したことのある方で、当時まだ今のサウナブームの兆しも見えなかった頃から、自身のSNSで啓蒙されていたことを思い出し、たった数年で芸能人にも認知されるようになったオーナーさんの成功に、勝手ながら（本当に勝手）我が事のように嬉しくなって、近くの銭湯に飛び込んだ。

きっちり動画のとおりにサウナ10分→水風呂2分→外気浴をこなし、そこで得られた「ととのう」という初めての感覚に、私は夢中になった。趣味という趣味を持ち合わせていなかった私に、最高のリフレッシュ方法を与えてくれた。ルーティンを回してもサウナにいる時間は最大２時間程度。たまに行く今までの銭湯に比べれば随分と長湯だが、休日をアクティブに過ごしてもなかなか仕事が頭から離れない私にとって、時間的にも金銭的にも最高にコストパフォマンスの高い気分転換となった。
以降週2回のペースでサウナに通うようになり、プロサウナーの方たち程ではないものの、近所のサウナを全て回ってみたり、家族・友人・同僚にその魅力を力説し、時には同行しサウナ仲間を増やしたりもした。
「ととのう」という言葉を生み出した「サ道」は勿論のこと、関連書籍は読み漁り、丁度その頃始まったドラマは全話録画して何度も見返していた。

空前のサウナブーム

過去にサウナブームは何度かあったらしいが、それでも今は過去とは比べ物にならないほど、まさに空前のサウナブームである。
今までオジサンのイメージが強かったサウナに若者が足を運ぶようになり、「デキる男はみんなサウナに通っている」と言わんばかりにビジネス書に類する関連本も出版された。さらにブームは性別を越えて「サウナ女子」を自称する女性客も増え、なんとOggiでも取り上げられるようになった。
加熱する勢いは留まることを知らず、フェスやアートとのコラボなど、どんどん洗練された文化を取り入れて、今では都内に一回数千円もするプライベートサウナという施設まである。
最早サウナは日々の疲れを静かに癒やすオジサンのための施設ではなく、クラフトビール片手にウェイウェイやる日に焼けたイケイケのお兄さんとビキニのお姉さんのものとなった。（偏見）

結果、当たり前だが都内のサウナは大混雑。私を含め、にわかサウナーはより高温を感じるために高い場所を好み、サウナ室では無言の席取り合戦が始まる。蒸されながらも最上段が空くのを今か今かと待ち、空いたら我先にとサウナマットを投げ入れる。
サウナ室に入れたらいいほうで、近所のサウナでは部屋の前に大の大人が股間をタオルで隠しながら行列を作るようになっていった。サウナに不可欠な水風呂も同様で、サウナ室よりも勿論狭い浴槽を前に、汗だくの男たちが入浴中の男たちを取り囲む、という奇妙な光景が度々見られるようになっていった。そしてそれは都内の有名サウナ店になると顕著になり、店にすら入れない日も増えてきた。
人が増えればマナーを守らない客の行為が目立つようになり、サウナの中で体を掻きむしり汗を飛ばす客、狭いサウナ室で大声で騒ぐ客、汗を流さずに水風呂に入る客、潜水禁止の水風呂で潜る客…。そんな客に遭遇し、せっかくの至福のひとときが台無しになることもしばしばあった。

そして、このコロナである。東京都が緊急事態宣言を発令し飲食店が厳しい対応を迫られる中、サウナ店の対応は曖昧で、都の要請を受けてこのGW期間中臨時休業した店舗、感染対策をかなり厳格に施して営業した店舗、対策不十分でも営業を続けている店舗など、様々だった。
かくいう私も頻度は減らし感染対策を万全にしたものの、やはりサウナには通っていたが、「三密」の全ての条件を満たした施設に行くことの後ろめたさも同時に感じていた。罪悪感に見てみないふりをし、サウナ室内で談笑する若者たちを見かけてはストレスに感じていた。